主役が登場しない物語「悪女について/有吉佐和子」
関連するタグ: 悪女について 有吉佐和子 小説一代で成り上がった謎の女性「富小路公子」。彼女が手練手管を駆使してのし上がっていくさまを描いた作品。それだと単なる立身出世ものだが、この小説が独特な点は「主人公である富小路公子の視点」が一切ないこと。彼女に関わった27人の人物の傍証という形で、彼女の波乱に満ちた生涯を浮かび上がらせている。
富小路公子は「時には処女のように時には娼婦のように時には天使のように時には悪魔のように」と裏表の激しい性格である。その二面性を描くため、彼女を一側面でしか見ていない人たちの視点で描く展開はなかなか興味深い。どちらが本当の富小路公子なのか。読者はその問いに迷い続ける。
とはいえ、あくまでも傍証は傍証でしかない。並列的に情報が並べられた展開は、話の盛り上がりという点ではどうしても弱くなってしまう。話を前へ前へと押し出していく力に弱いのが欠点。なにかサスペンスフルな、あるいはミステリ的な展開をからめていれば傑作になっただろう。構成は面白いと思うけどね。
私的には「主人公を主人公として描かない作品」として宮部みゆきの「火車」を思い出す。あちらはミステリタッチに描かれていて話をぐいぐいと引張ってくれた。この作品に興味があるかたにはこちらをオススメする。

新潮社 (1983/03)
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悪女について 有吉佐和子 小説
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