ちょいダーク「グラスホッパー/伊坂幸太郎」
関連するタグ: グラスホッパー 伊坂幸太郎 小説 サスペンス最悪最低の裏組織「令嬢」。その長の息子が車にはねられて死んだ。それを仕組んだのは「押し屋」。背中を押してターゲットを殺す殺し屋。その姿を追い掛ける二人の殺し屋。蝉、鯨。一人の普通の男。鈴木。彼らは押し屋のしっぽをつかめるのか?
相変わらず伊坂幸太郎はウマい。最初の30ページは鳥肌すら立つ構成である。一発目に逆ギレする教授の与太話を持ってきてツカミはOK。次に令嬢で働く主人公・鈴木がカップルを誘拐するシーンを見せて目を引きつける。同乗する彼の監視者・比与子は鈴木が妻を殺した社長の息子に復讐するために「令嬢」の社員になったと指摘する。忠誠心を試すため、彼女は鈴木にカップルを殺せと命令する。ためらう鈴木の前に憎き社長の息子が姿を見せ――そして、予想しない事件が起き、物語が打ち出される。
次々と提示される事実。緊迫感を増す展開。この30ページは実に味わい深かった。ああ。伊坂幸太郎は天才だなーとしみじみ思う。
その後も「押し屋」を尾行した鈴木がたどりついたのは普通の一軒家。家族団らんで「押し屋ってなに?」状態。「令嬢」からの報告を急かされながらも、彼らの正体がつかめない鈴木は返答ができない。鈴木と家族の奇妙なやりとりを描き、もう一方では押し屋をおいかける二人の殺し屋の殺伐とした物語を進行させる。ユーモアとシリアスさを描いた伊坂節はあいかわらず健在である。
でも★3なんだよな。悪いけど。このほめ方だと★4はいくのに。
いつも通りのウマサを見せてくれるのに、どうしてだろう。最初に誘拐したカップルが伏線として回収された瞬間は鳥肌すら立った。だけど★3だ。あ。★3はわりと面白いので、別につまらないわけじゃないのよ。
物語の半分を背負う鯨と蝉があまり好きになれなかった。殺し屋だけあって殺伐としている。鯨は自殺に追い込む瞳を持つ殺し屋。その力ゆえか彼は自殺に追い込んだものたちの幻影を見る病に冒されている。蝉はナイフ使いの殺し屋。陽気な奴だが口も悪く、ナイフでさくさく人を刺す。
彼らのストーリーがダークすぎるのよね。伊坂幸太郎の主人公って犯罪者が多いのだけど、どこか脳天気なところがあって憎めない感じなのよ。でも彼らは幻覚見ているわ、わりと暴力的だわとハードな連中である。蝉の性格はユーモアがあるんだけど。
ノワールものを描くには、伊坂幸太郎の「現実的だけどちょっと不思議」な「現代のおとぎ話」とも言われている世界観にはそぐわない感じがするのよね。そこらへんの齟齬にとまどいを感じて、面白い! と言い切れない。面白いんだけど。になっちゃうのだ。
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グラスホッパー 伊坂幸太郎 小説 サスペンス
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