風と光のその先へ「一瞬の風になれ3 ドン/佐藤多佳子」
関連するタグ: 一瞬の風になれ 佐藤多佳子 小説
[評価:★★★★★]
一瞬の風になれ。走るたびに才能を
開花する高校生・神谷の陸上生活を
描いた3巻にして最終巻。
3巻では2年の秋から3年の夏までを
扱っている。卒業か部の引退までいくのか、
と思ったが、あそこで終わらせるか。
連と神谷の戦いは? 谷口との淡い恋は?
すべての回答は読者に任せられた。でも、
それでいいんじゃないかな。
これだけの物語を描いたんだ。その結末を
想像するだけの断片は充分にある。あとは、
読者の「想い」次第だ。
今回は高校最後のインターハイ予選という
ことで、大会の描写に力を入れている。たぶん、
ページの半分以上が大会のシーンである。
力及ばず敗退していく部のメンバーたち。
その想いを胸に走る神谷と連。彼らは決勝の
舞台で、短距離の権化・仙波に挑む。
リレーも100mも。決勝戦はどれも
カッコいい。それは後述する。しかし。。。
中盤までの主役は、もう根岸じゃないかな。
根岸なんだよ。うん。根岸がカッコいい。
リレーメンバー唯一の凡人として、
自分の走力を嘆き続ける根岸。
3年生になり、鍵山という期待のホープが
入部してきた。彼は根岸はおろか、2年の
リレメン・桃山よりも足が速い。
根岸は満足して自分からリレメンの座を譲る。
しかし、そう簡単にはうまくいかないんだな。
鍵山は癖のある性格で要領も悪く、なかなか
リレメンとして溶け込めず、バトンリレーも
うまくいかない。
鍵山が故障したので県大会までは根岸が
代走して南関東大会まで進めたが、しかし、
神谷たちに復帰した鍵山と走る勇気はなかった。
鍵山ではなく根岸と走ることを希望する神谷たち。
その神谷たちに根岸は「走らない」と宣言する。
> 俺は、このチームが総体で優勝することを
> 信じている。俺が入ったら、それは無理だ。
> でも、鍵山が完全にフィットしたら可能性がある。
自分が入って関東を突破しても、総体に
出場するだけで、優勝はできない。鍵山を
フィットさせる時間が足りない。
> 日本一だ。全国で走るんじゃない。
> 全国で勝つんだ。最後に。
> そんな夢の見られるチームなんだぞ!
他の競技で根岸は県大会で敗退している。
南関東大会には出られない。神谷の提案に
のれば、その走る機会が手に入るのに。。。
でも、彼は自分の気持ちを抑えて、
チームのために、全国優勝のために、
まだ不完全な後輩に席をゆずる。
お前、カッコよすぎだろ。。。根岸。
その後も鍵山を指導して、日陰の存在
として彼らを支え続ける。
振り返ると、根岸っていつもそうだよね。
気負いすぎる神谷。風変わりな連。彼らの
緩衝材として、本当に貢献している。
いろいろな人間がいてこそ、良いチームが
できあがる。根岸は自分の力を知り、もっとも
最善の方法でチームを支え続けたんだ。
そして始まる、南関東の100m、
4継リレーの決勝戦。天才たちの
フィールドで最後の物語がはじまる。
レースシーンは相変わらず短い。1ページ
も書いていない。しかし、熱い。熱いんだ。
もう心が神谷たちに乗り移っているからね。
ぬかせるか! のたった一言だけで、
心が高揚する。彼らが2年以上積み上げて
いたものを見てきたからね。。。
見せてくれ、神谷、連!
お前たちの最高の走りを!
個人的に気に入ったのはリレーを終えて、
鍵山が泣きながら神谷に抱きついたところ。
あの、ワガママな鍵山が。。。
前部長の守屋は、神谷を指名するときに、
「ここをいい場所にしてくれ」と言った。
ああ、本当にいい場所になったんだな。。。
そう思えた瞬間だった。
そんな美しい物語を描いた、この小説を
読めて良かった。最高だよ。
<<関連エントリ>>
一瞬の風になれ1 イチニツイテ
一瞬の風になれ2 ヨウイ

講談社 (2006/10/25)
売り上げランキング: 1315
講談社 (2006/08/26)
売り上げランキング: 464
<<キーワード>>
一瞬の風になれ 佐藤多佳子 小説
一瞬の風になれ 佐藤多佳子 小説
コメント
コメントの投稿
トラックバック
http://onimiki.blog54.fc2.com/tb.php/39-a626312b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)


