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防犯探偵あらわる「硝子のハンマー/貴志祐介」

関連するタグ: 硝子のハンマー  貴志祐介  小説  ミステリ 
硝子のハンマー (角川文庫 き 28-2)
[評価:★★★☆☆]

黒い家など、ホラーというかサスペンス的な小説で有名な貴志祐介の書いた本格推理小説。

元泥棒くさい、うさんくささ爆発の防犯探偵(豊富な防犯知識を駆使する探偵)とミステリ好きの弁護士が、高層ビルで起きた密室殺人事件の真相に挑む。

「今、他の人間に犯行が可能でなかったか、専門家を雇って調べています」
「専門家というと、何の?」
「一応、防犯コンサルタントという肩書きがあるんですが、侵入に関するプロです」
「侵入のプロ?」
「まあ、ほとんど、泥棒のようなものと思っていただければ」


防弾ガラス、監視カメラ、暗証番号式のエレベーター。
何者も寄せ付けない鉄壁のセキュリティのなか、介護サービス会社の社長が何者かによって撲殺された。その謎を解き明かす。

小説は前編が推理パート、後編が犯人主観の物語となっている。
抜け目なく、多少のイリーガルなら突破してしまう防犯探偵の性格が実にいい味を出している。マジメな弁護士とのやりとりも面白い。

それに対して、後編の犯人生い立ち編は、まー、普通かな。犯人がなぜ犯行に走ったかを描くのは、青の炎を描いた貴志祐介らしいといえば貴志祐介らしい。

でも、彼にもツラい過去があってね。だから犯罪に手を染めたのよね。
という話なんだけど、類型的であまり胸を打たないな。あっそ、みたいな。

ミステリ小説ってトリック暴露の瞬間に、どれだけ痺れられるかがポイント。
この作品、その痺れが切れ味鋭くないのよね。

それは犯人パートで犯人が犯行を犯す準備から実行までを描いたためで、探偵が口で説明したわけではないから、かな。こうきて、こうして、ああやって、みたいな謎を解きほぐす感覚がなかったのが残念。

まー。。。トリック自体もそこまですごいものでもないんだが。。。
ふーんといったかんじ。

ミステリとしてはあれだけど、防犯探偵のキャラがいい。

謎を解いた防犯探偵は、犯人を呼び出す。
てっきり「事件のことを黙っていて欲しければ金を出せ」と取引を要求されている。そう思った犯人は。。。

「半分で、どうですか?」
 それから、純子に目をやった。
「いや、三分の一ずつ。一人頭、二億円以上になるはずです」
 男は、無表情に首を振った。
「じゃあ、いくらなら……?」
 絶望に打ちひしがれそうになりながら、一縷の望みを込めて訊ねる。
「私は、そこまで強欲じゃない。本来なら、文句なく、折半で手を打ってた。そこにいる、青砥先生には報告しないでね。お望みなら、ダイヤをさばくルートくらいは、紹介できただろう」
 男は嘆息するようにいう。
「だが、君は、最悪の選択……殺人に手を染めた」


いいね。このセリフにこそ防犯探偵のキャラが生きている。
泥棒としての矜持。物は盗んでも命までは奪わない。
それが防犯探偵のボーダーライン。

キャラがおいしいので防犯探偵の活躍をまた見てみたい。
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