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後半急ぎすぎかな「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹」

関連するタグ: 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  桜庭一樹  ラノベ  ライトノベル  小説  サスペンス 
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)
[評価:★★★☆☆]

直木賞を受賞した桜庭一樹の出世作である。

主人公は13歳の中学生二人。
語り部の「山田なぎさ」と転校生の「海野藻屑」。

ふたりには共通点がある。それは「現実に目を背けていること」。

山田なぎさは貧乏で公団暮らし。
母が働いているにもかかわらず、兄は引きこもりでその稼ぎを無駄遣いしていた。

ダメでどうしようもない兄をなぎさは「貴族」と称して敬い、彼を喰わすため、中学卒業と同時に働こうと考えている。

彼女は必要としていた。
世を渡るための金という「実弾」を。兄という幻想を守るために。

海野藻屑は昔は有名だった芸能人の娘。
金持ちではあるが、父から日常的に暴力をふるわれ、片足は不自由で片耳も聞こえない。

そんな彼女が必要としたのは「砂糖菓子の弾丸」。
自分は人魚などという絵空事を口にしてつらい現実から眼を背けていた。

「こんな人生、ほんとじゃないんだ」
「えっ……?」
「きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気。きっと全部、悪い嘘」


この小説の冒頭は、藻屑がバラバラ死体となって発見されるシーンからはじまる。
そして一ヶ月前にさかのぼり、どのように二人は出会い、二人は友情を積み上げ、やがて藻屑が死んだのか、と話が展開していく。

彼女たちには力がない。
それはもう、絶対的なまでに。

 あたしたちは十三歳で、あたしたちは未成年で、あたしたちは義務教育を受けている中学生。あたしたにはまだ、運命を切り開く力はなかった。親の庇護の元で育たなければならないし、子供は親を選べないのだ。あたしはこの親の元でみんなより一足も二足も早く大人になったふりをして家事をして兄の保護者になって心の中だけでもうダメだよ、と弱音を吐いている。藻屑も行けるものならばどこかに行くのかもしれない。大人になって自由になったら。だけど十三歳ではどこにもいけない。


だけど十三歳ではどこにもいけない。
不幸な檻を打ち抜くための弾丸を、彼女たちはまだ手にできない。

この気持ち、何となくわかるね。
わたしも子供のころ、どこかに行きたくなった。
でも、どこにもいけるはずがない。

社会という枠組みで生きていくには、子供という肩書きはあまりにも弱すぎる。金も身分も仕事もない。

そうやってだんだんと追い詰められていく二人の少女――という筋書きなわけだが、ここがちょっと残念だ。

追い詰め方が弱いんだね。
その後、現実に耐えきれなくなった二人は逃げようとするのだが、追い詰め方が甘い。

二人が仲良くなるまではわりと丁寧に描かれているのだが、後半の追い詰められるあたりからが、どうも唐突で描写が足りない印象を受けるのだよね。

あと100ページほど追加して、そのあたりをいろいろと追加してくれると、後半の彼女たちの「逃げたい!」という想いとシンクロできたかもしれない。

彼女たちが日常に苦痛を感じていたのは事実だとしても、今まで耐えていた状況下で、あれくらいで逃げたいと思うほどの高まりを感じなかった。

もっとこう、絶望的なものを描いてくれれば。。。と思わなくもない。あと最終盤の展開がちょっと唐突なのも。そこが伸び悩んで★3だったね。

文章とかべらぼうにウマいし、前半の出来は神だったのでとても残念である。
この人の文章のウマさを見れば、一般小説でも受け入れられるってのはとても納得がいく。

そして。。。二人は逃げだそうと決意し。。。海野藻屑はバラバラ死体になった。

 担任教師は頭をかきむしって、苦しそうにうめいた。
「あぁ、海野。生き抜けば大人になれたのに……」
 絞り出すような声。
「だけどなぁ、海野。おまえには生き抜く気、あったのか……?」


生き抜けば大人になる。
当たり前のことだが、ハッとさせられる。
そう。生き抜けない子供たちもいる。その事実に。

 あたしは、暴力も喪失も痛みもなにもなかったふりをしてつらっとしてある日、大人になるだろう。だけど十三歳でここにいて周りには同じようなへっぽこ武器でぽこぽこへんなものを撃ちながら戦ってる兵士たちがほかにもいて、生き残った子と死んじゃった子がいたことはけして忘れないと思う。
 忘れない。
 この世界ではときどきそういうことが起こる。砂糖でできた弾丸では子供は世界と戦えない。
 あたしの魂は、それを知っている。


これがラストの文章である。一部、割愛しているけど。
いい文章だね。この文章の哀愁は胸にぐさっと突き刺さる。
わたしも忘れない。生き残れなかった子供たちを。

おもちゃの拳銃と使い物にならない銃弾。
それだけで世界と戦う子供たち。

おとなの暴力に振り回される子供たちの無力さを『砂糖菓子の弾丸』というキーワードに閉じ込めて描いた着眼点は非常に秀逸。文章力もしっかりとしている。

おしむらくは、少女たちの不満のブレイク・ポイントがどうにも弱い点。小説の起爆点であるため、そこが弱く感じたのが残念だった。
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