すべての子供だった人へ「星の王子さま/サン=デグジュペリ」

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星の王子さま―オリジナル版
[評価:★★★☆☆]

あの有名な「星の王子さま」である。実は初読。どんな本なんだろうね。

こういう本である。
主人公の乗る飛行機が砂漠に墜落。その故障を直していると、不思議な少年と出会う。彼は、自分と大きさの変わらない、小さな惑星の王子さまで、宇宙を旅している。

王子さまは自分が旅した惑星と、その住民の話をはじめる。
・たったひとりで惑星に住む王さま
・称賛を求めるおじさん
・酒浸りのおじさん
・優秀だと言い張る実業家

など。

純粋な心を持つ王子さまは彼らの行動に疑問をかんじ、いろいろと言い返す。その王子さまのまっすぐさがね。これらは現代を生きる人たちの風刺。それに対してきちっと自分の意見を通し、美しい生き方を曲げない王子さまはカッコいい。

そして地球を訪れる。
その広大な惑星で、王子さまはキツネと出会う。
キツネとのやりとりは白眉だねー。この物語の。

「でも、もしきみがぼくをなつかせてくれたら、ぼくの暮らしは急に陽が差したようになる。ぼくは、ほかの誰ともちがう君の足音が、わかるようになる。ほかの足音なら、ぼくは地面にもぐってかくれる。でもきみの足音は、音楽みたいに、ぼくを巣の外へいざなうんだ。それに、ほら! むこうに麦畑が見えるだろう? ほくはパンを食べない。だから小麦にはなんの用もない。麦畑を見ても、心に浮かぶものもない。それはさびしいことだ! でもきみは、金色の髪をしている。そのきみがぼくをなつかせてくれたら、すてきだろうなあ! 金色に輝く小麦を見ただけで、ぼくはきみを思い出すようになる。麦畑をわたっていく風の音まで、好きになる……」


それに、こうもいう。

たとえば、きみが夕方の四時に来るなら、ぼくは三時からうれしくなってくる。そこから時間が進めば進むほど、どんどんうれしくなってくる。そうしてとうとう四時になると、もう、そわそわしたり、どきどきしたり。こうして、幸福の味を知るんだよ!


そして、こういう。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
「きみのバラをかけがえのないものしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。きみはなつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある……」


キツネが語る人と人とのつながり。
当たり前のことを、心で感じることを、キツネは言葉にして紡ぐ。

そうして、主人公との会話を終えた星の王子さまは、自分が残していったバラのため(バラは恋人のメタファーだろう)、再び宇宙へと帰っていく。

王子さま登場人物のセリフは現実の世界の風刺や警句に満ちている。子供が読めば人生の教養書として、大人が読めば反省する部分を感じつつ読めるだろう。子供よりも大人が読むべき本かな。

なるほど、読み継がれるだけのことはある。

ただまー、極端な感動や極端な面白さがあるわけでもないので、ふーんとは思うだけで格別に面白いわけでもない。

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涼宮ハルヒの日常「涼宮ハルヒの退屈(ハルヒ3)/谷口流」

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涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)
[評価:★★★★★]

ハルヒ・シリーズの第三巻である。
今回は短編集。実に。実に面白い。

ハルヒの暴走する日常を描く形式の本作は、短いタイミングで一発ネタのように打ち上げる短編のほうが似合うのかもしれない。

起伏が短いのがイイネ。

トラブルメイカーのハルヒが落ち込むと低調になりやすい物語なのに、物語の形式上、どうしてもハルヒを落ち込ませる必要があるのが本作の弱点。短編なら落ち込み時間自体が短いので、それほど気にならないんだな。

今回、というかか、いつものことだが宇宙人・長門ユキが大活躍である。
草野球大会に出場し、強豪を相手に押されまくるSOS団。鬱憤のたまるハルヒを抑えるため、長門のとった行動は?

 やがてベンチまで歩いてきた長門は、俺にバットを手渡して、
「それ」
 使い古しのバットを指さし、
「属性情報をブースト変更」と言った。
「なにそれ?」と俺。長門はしばらくじっと俺を見つめてから、
「ホーミングモード」


要約すると。。。
バットを誰が打ってもホームランになるように改造した。ホーミングもするので、バットがボールに勝手に当たる。

要約っていうか、文字数増えてるってのはツッコんじゃダメ。絶対!

作者も長門が「何とかしすぎ」なのは気づいたようで、
あとがきで「シリーズタイトルそのものを『がんばれ長門さん』にしようかと思い始めた」などと書いている。

まー、それくらい長門が活躍している。
「長門は俺の嫁」という発言をネットでたまにみるが、なるほど、この冷静な仕事人タイプのカッコよさは惚れる人も多いだろうな。

各話のあらすじはこんな感じ。

・涼宮ハルヒの退屈
 SOS団率いるハルヒが草野球大会に出場する

・笹の葉ラプソディ
 七夕の日。みくるに呼び出されたキョンは過去に戻り、中学生のハルヒと出会う。

・ミステリックサイン
 消えた電脳部の部長とハルヒが作ったサイトのバナーの因果関係とは?

・孤島症候群
 古泉の紹介で訪れた孤島の別荘。そこで殺人事件が起こる。。。

あ。ちなみに。
1、2で書いたとおり、ハルヒたちの個性ではなく、キョンのツッコミをメインに読んだほうが面白いと思うので、そこは注意してね。約束だよ!
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防犯探偵あらわる「硝子のハンマー/貴志祐介」

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硝子のハンマー (角川文庫 き 28-2)
[評価:★★★☆☆]

黒い家など、ホラーというかサスペンス的な小説で有名な貴志祐介の書いた本格推理小説。

元泥棒くさい、うさんくささ爆発の防犯探偵(豊富な防犯知識を駆使する探偵)とミステリ好きの弁護士が、高層ビルで起きた密室殺人事件の真相に挑む。

「今、他の人間に犯行が可能でなかったか、専門家を雇って調べています」
「専門家というと、何の?」
「一応、防犯コンサルタントという肩書きがあるんですが、侵入に関するプロです」
「侵入のプロ?」
「まあ、ほとんど、泥棒のようなものと思っていただければ」


防弾ガラス、監視カメラ、暗証番号式のエレベーター。
何者も寄せ付けない鉄壁のセキュリティのなか、介護サービス会社の社長が何者かによって撲殺された。その謎を解き明かす。

小説は前編が推理パート、後編が犯人主観の物語となっている。
抜け目なく、多少のイリーガルなら突破してしまう防犯探偵の性格が実にいい味を出している。マジメな弁護士とのやりとりも面白い。

それに対して、後編の犯人生い立ち編は、まー、普通かな。犯人がなぜ犯行に走ったかを描くのは、青の炎を描いた貴志祐介らしいといえば貴志祐介らしい。

でも、彼にもツラい過去があってね。だから犯罪に手を染めたのよね。
という話なんだけど、類型的であまり胸を打たないな。あっそ、みたいな。

ミステリ小説ってトリック暴露の瞬間に、どれだけ痺れられるかがポイント。
この作品、その痺れが切れ味鋭くないのよね。

それは犯人パートで犯人が犯行を犯す準備から実行までを描いたためで、探偵が口で説明したわけではないから、かな。こうきて、こうして、ああやって、みたいな謎を解きほぐす感覚がなかったのが残念。

まー。。。トリック自体もそこまですごいものでもないんだが。。。
ふーんといったかんじ。

ミステリとしてはあれだけど、防犯探偵のキャラがいい。

謎を解いた防犯探偵は、犯人を呼び出す。
てっきり「事件のことを黙っていて欲しければ金を出せ」と取引を要求されている。そう思った犯人は。。。

「半分で、どうですか?」
 それから、純子に目をやった。
「いや、三分の一ずつ。一人頭、二億円以上になるはずです」
 男は、無表情に首を振った。
「じゃあ、いくらなら……?」
 絶望に打ちひしがれそうになりながら、一縷の望みを込めて訊ねる。
「私は、そこまで強欲じゃない。本来なら、文句なく、折半で手を打ってた。そこにいる、青砥先生には報告しないでね。お望みなら、ダイヤをさばくルートくらいは、紹介できただろう」
 男は嘆息するようにいう。
「だが、君は、最悪の選択……殺人に手を染めた」


いいね。このセリフにこそ防犯探偵のキャラが生きている。
泥棒としての矜持。物は盗んでも命までは奪わない。
それが防犯探偵のボーダーライン。

キャラがおいしいので防犯探偵の活躍をまた見てみたい。
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ドラマと現実がクロス「学園カゲキ!2/山下進」

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学園カゲキ! 2 (ガガガ文庫 や 1-2)
[評価:★★★☆☆]

役者を目指す学生たちが集う学園カゲキ。学園では有望な生徒たちを主人公にしてドラマを作成し、BSチャンネルで放送している。

今回のドラマは「怪獣ラブコメ・きぐるみん」。
日常生活できぐるみを着た少女と、彼女が好きな男の子と、きぐるみ少女の親友の女の子。三人の三角関係を描いた物語である。

今回の話のキモ。それはWの三角関係である。
ドラマでも三角関係なら、出演者たちも三角関係。

ただし、横恋慕の女の子が現実とドラマで逆転していて、そのそのあべこべの設定がお話のコクとなっている。

現実で二人は仲違いしてしまうわけだが、ドラマの役を通じて互いの心境を理解し、許し合うという展開になっている。そこは演劇ドラマらしいよね。

まー、そこそこは楽しめるんだが。。。
ただ、コメディ作品として突き抜けたものがないのだよな。クスッとたまには笑えるのだが、それくらい。もうちょい、なにかがあるといいんだけど。
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文章がイイ「100回泣くこと/中村航」

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100回泣くこと (小学館文庫 な 6-1)
[評価:★★★★☆]

結婚を間近に控えた婚約者が卵巣ガンで死んでしまう作品。
まとめるとそういう本である。

どこにでもいる幸せを謳歌するカップル。
彼らの幸せは本当に小さくて、ありきたりなもの。

中村航はそんな日常を柔らかくて優しい筆致で、ときおりユーモアをまぜながら描いていく。

「結婚しようって言われたら、普通断れないよね」
 僕の手元を照らしながら彼女は言った。
「そんなことないでしょ」
「いいや、無理。普通断れないよ」
 彼女は何かの意味を強調したいとき、普通という言葉をよく使った。
「あー、でもね」と、彼女は言った。「夜景の見えるレストランで、もの凄く凝った方法で指輪渡されたりしたら、断るかも」
「それは普通に断るかもな」


いいねーいいねー。このやりとり。
おおげさなのはやだよねーみたいな普通の感覚?

そういうのが全編に渡って徹底されている。
彼も彼女もそこらへんにただの人なんだな。
。。。彼女の感覚はちょっと風変わりなところがあるんだけど。

僕らは同じプロジェクトに属する最小単位のユニットだった。プロジェクトの名はハッピネス。僕らは壁にもたれながらスケッチブックを眺めた。ときどき笑い、ときどき黙り、ときどきキスをして、ときどき指相撲をした。


これなんて、すばらしいよね。
キスをした、で止めずに指相撲まで書くことがいい。

キスで止めると、面白くもおかしくもないオチなし文。
そこに「指相撲」という遊びをいれることで笑いをとって印象を深めるんだね。

彼らの幸せな日々を、中村航は小さな出来事をコツコツと積み上げることで印象深く描く。

熱が出た彼女のために「解熱の舞」を踊ってみたり、プロポーズ記念日の6月11日を6月を彼氏が覚え、11日を彼女が覚えたり、なんてね。

でもこれ、彼女が死を間近に控えたとき、こういうのよね。

「もう六月だよ」
「早いね。ん? あれ何日だっけ」と、彼女は言った。
「六月」と、僕は言った。
「二十三日」と、彼女は言った。「いや違う。あれ?」
「十一日だよ」
「そっか、ごめん」と、彼女は言った。「記憶力が薄れているみたい」
「そんなことないでしょ」
「わかんない。でもこれからは藤井君が全部覚えておいて」


重い。重いねー。
死にゆく彼女がいう「全部覚えておいて」。うーん。重い。

文章がうまいね。この人は。
小さなことを積み上げて、かつ、それを印象深く残す技を持っている。

この人の本をいろいろと読んでみたくなった。
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後半急ぎすぎかな「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹」

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)
[評価:★★★☆☆]

直木賞を受賞した桜庭一樹の出世作である。

主人公は13歳の中学生二人。
語り部の「山田なぎさ」と転校生の「海野藻屑」。

ふたりには共通点がある。それは「現実に目を背けていること」。

山田なぎさは貧乏で公団暮らし。
母が働いているにもかかわらず、兄は引きこもりでその稼ぎを無駄遣いしていた。

ダメでどうしようもない兄をなぎさは「貴族」と称して敬い、彼を喰わすため、中学卒業と同時に働こうと考えている。

彼女は必要としていた。
世を渡るための金という「実弾」を。兄という幻想を守るために。

海野藻屑は昔は有名だった芸能人の娘。
金持ちではあるが、父から日常的に暴力をふるわれ、片足は不自由で片耳も聞こえない。

そんな彼女が必要としたのは「砂糖菓子の弾丸」。
自分は人魚などという絵空事を口にしてつらい現実から眼を背けていた。

「こんな人生、ほんとじゃないんだ」
「えっ……?」
「きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気。きっと全部、悪い嘘」


この小説の冒頭は、藻屑がバラバラ死体となって発見されるシーンからはじまる。
そして一ヶ月前にさかのぼり、どのように二人は出会い、二人は友情を積み上げ、やがて藻屑が死んだのか、と話が展開していく。

彼女たちには力がない。
それはもう、絶対的なまでに。

 あたしたちは十三歳で、あたしたちは未成年で、あたしたちは義務教育を受けている中学生。あたしたにはまだ、運命を切り開く力はなかった。親の庇護の元で育たなければならないし、子供は親を選べないのだ。あたしはこの親の元でみんなより一足も二足も早く大人になったふりをして家事をして兄の保護者になって心の中だけでもうダメだよ、と弱音を吐いている。藻屑も行けるものならばどこかに行くのかもしれない。大人になって自由になったら。だけど十三歳ではどこにもいけない。


だけど十三歳ではどこにもいけない。
不幸な檻を打ち抜くための弾丸を、彼女たちはまだ手にできない。

この気持ち、何となくわかるね。
わたしも子供のころ、どこかに行きたくなった。
でも、どこにもいけるはずがない。

社会という枠組みで生きていくには、子供という肩書きはあまりにも弱すぎる。金も身分も仕事もない。

そうやってだんだんと追い詰められていく二人の少女――という筋書きなわけだが、ここがちょっと残念だ。

追い詰め方が弱いんだね。
その後、現実に耐えきれなくなった二人は逃げようとするのだが、追い詰め方が甘い。

二人が仲良くなるまではわりと丁寧に描かれているのだが、後半の追い詰められるあたりからが、どうも唐突で描写が足りない印象を受けるのだよね。

あと100ページほど追加して、そのあたりをいろいろと追加してくれると、後半の彼女たちの「逃げたい!」という想いとシンクロできたかもしれない。

彼女たちが日常に苦痛を感じていたのは事実だとしても、今まで耐えていた状況下で、あれくらいで逃げたいと思うほどの高まりを感じなかった。

もっとこう、絶望的なものを描いてくれれば。。。と思わなくもない。あと最終盤の展開がちょっと唐突なのも。そこが伸び悩んで★3だったね。

文章とかべらぼうにウマいし、前半の出来は神だったのでとても残念である。
この人の文章のウマさを見れば、一般小説でも受け入れられるってのはとても納得がいく。

そして。。。二人は逃げだそうと決意し。。。海野藻屑はバラバラ死体になった。

 担任教師は頭をかきむしって、苦しそうにうめいた。
「あぁ、海野。生き抜けば大人になれたのに……」
 絞り出すような声。
「だけどなぁ、海野。おまえには生き抜く気、あったのか……?」


生き抜けば大人になる。
当たり前のことだが、ハッとさせられる。
そう。生き抜けない子供たちもいる。その事実に。

 あたしは、暴力も喪失も痛みもなにもなかったふりをしてつらっとしてある日、大人になるだろう。だけど十三歳でここにいて周りには同じようなへっぽこ武器でぽこぽこへんなものを撃ちながら戦ってる兵士たちがほかにもいて、生き残った子と死んじゃった子がいたことはけして忘れないと思う。
 忘れない。
 この世界ではときどきそういうことが起こる。砂糖でできた弾丸では子供は世界と戦えない。
 あたしの魂は、それを知っている。


これがラストの文章である。一部、割愛しているけど。
いい文章だね。この文章の哀愁は胸にぐさっと突き刺さる。
わたしも忘れない。生き残れなかった子供たちを。

おもちゃの拳銃と使い物にならない銃弾。
それだけで世界と戦う子供たち。

おとなの暴力に振り回される子供たちの無力さを『砂糖菓子の弾丸』というキーワードに閉じ込めて描いた着眼点は非常に秀逸。文章力もしっかりとしている。

おしむらくは、少女たちの不満のブレイク・ポイントがどうにも弱い点。小説の起爆点であるため、そこが弱く感じたのが残念だった。
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意外とシリアス「ゼロの使い魔2/ヤマグチノボル」

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ゼロの使い魔(2) 風のアルビオン (MF文庫)
[評価:★★★☆☆]

魔王の才能がてんでない「ゼロの」ルイズと、その使い魔として現代日本から誤って召喚されたサイトのファンタジー小説の2巻。

今回は前の巻から一転、シリアス目の展開になる。

ハルゲニア大陸の分裂を憂慮した貴族連盟。
大陸を統一せんと画策する彼らは、まずは弱小のアルビオンへと戦争を仕掛ける。

次に狙われるトリステインは強国ゲルマニア帝国との同盟を結ぼうと、帝国とトリステイン王女の結婚の話を進める。

そのトリステイン王女アンリエッタは「彼女が昔、アルビオンの王子に送った手紙」の奪還をルイズたちに秘密裏に依頼する。その手紙が貴族連盟にわたって白日にさらされれば、ゲルマニアとの婚姻、そして同盟の話がなかったことになってしまうからだ。

ということで、ルイズらは戦争中のアルビオンへと向けて旅立つのだった。

戦争という下敷きがあるので、この物語にしてはシリアスである。
あくまでも「この物語にしては」である。

さらに、旅に同行する風の魔術剣士・ワルド子爵。
彼はルイズの婚約者でもある凄腕の使い手である。

ルイズという少女に対してストレートに「好きだ」と伝えるワルドに対して、サイトはいろいろな感情のまじった不愉快さを隠し切れない。

このあたりの
・戦争という下敷き
・ルイズへの恋心

あたりが、前の巻よりも前面に出ている。
結果、ルイズとサイトの漫才のような雰囲気が前より後退したのは残念。
あのやりとりが面白かったのでね。

でまー、様々な戦いを通して、ルイズとサイトはお互いの大切さと自分の気持ちについて再確認するわけだが。。。

まだ2巻なんだけど、ラブコメとしてここまで接近して大丈夫なんだろうか?
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俺はバチスタを斬る「チーム・バチスタの栄光/海道尊」

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チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599)
[評価:★★★★☆]

噂の「チーム・バチスタの栄光」である。

困難なバチスタ手術において伝説的な成功率を誇る「チーム・バチスタ」。
現代の伝説と化した天才外科チームがここ最近、連続で手術に失敗している。

リーダーの桐生恭一は失敗の原因が見当もつかない。
彼の相談を受けて、院長の高階は窓際医・田口に真相の究明を依頼する。
というお話。

なぜバチスタ・チームの手術が途端に失敗し始めたのか。

この小説は早い段階で「それが殺しである」とほのめかす。

手術という密室内で起こった衆人環境の殺し。
誰が、なぜ、それをおこなったのか。おこないえたのか。

現役の医者によって書かれた医療ミステリである。

田口の性格がいい。

 名は体を表す、とはよく言ったものだ。彼はどこからどう見ても「桐生恭一」だし、俺のほうは「田中公平」以外の何ものでもない。なぜ世の中はかくも不公平なのだろう。自己紹介をするたびに俺は、公平と名づけた親をこっそりとなじる。


こんなグチとも皮肉ともつかないようなセリフが延々と語られる。
万年講師の出世リタイア組であるため、ガツガツとした連中を見ながら淡々と風刺するさまが実に面白い。ハードボイルドの流れを汲む小説だね。

その田口が前に出る上巻はかなり楽しめた。
ただ、下巻がどうも好きになれない。

探偵役として派遣されてきた白鳥。
彼はかなりエキセントリックな性格で傍若無人というか口が悪い。容赦のない毒舌と無尽蔵の行動力で関係者をかき回す。

「そりゃあそうでしょう、田口センセみたいに、女性にもてないタイプには、アクティブ・フェーズは理解しにくいと思います」
 俺はかちんと来た。たとえ明白な事実であっても、いや、明白な事実だからこそ、初対面の他人から面と向かって言われたら、誰だってむかつくだろう。


この白鳥の暴走が下巻の中心となる。
反面、田口のひねりのきいた語りが抑え目になる。そこが残念。

白鳥の性格はわたしにはエキセントリックすぎたな。同情の余地なしでやなやつである。名探偵が助手をいじめるのは「よくある」が、そこには「からかい」とか「愛情」みたいなのがある。白鳥はそれがなくて、単に変な人なので読んでいてスナオに楽しめなかった。

そこで点数を落としてしまったので★4ってところ。

白鳥のエキセントリックぶりが純粋に楽しめる人なら★5クラスだろう。

医療ミステリという稀有なテリトリーを扱い、立派な娯楽作品として仕立てている。文章もしっかりしている。ほとんどの人はそれなりに楽しめるだろう。オススメ。

この人の文章はなかなか味がある。
けっこう文章が好みなので、次の作品も読んでみたい。


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まったり気味「狼と香辛料4/支倉凍砂」

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狼と香辛料 (4)
[評価:★★★☆☆]

少女の姿をした賢狼ホロと行商人ロレンスの旅を描くシリーズの第四弾。

今回は異教の神を奉じる村が舞台。彼らの村でとれた麦が取引先の街から「毒入りだ」といちゃもんをつけられる。どうしようもなくなった村人たちは旅人のロレンスたちを犯人に仕立て上げようとする話。

うーむ。今回は2巻3巻に比べると落ちるかな。
評価的には1巻と同じくらい。おまけで★4にした1巻とは違い、★3にした。もうこの作品のキャパはわかっている。これくらいじゃ我慢できない。

何が微妙かというと、終始ロレンスが余裕だということ。

借金大王というくらい追い詰められまくり、ホロとの仲も危なかったロレンス。そのピンチっぷりが今回は影を潜めている。

ホロという最強のカードを持つロレンスは、今回「いつでもホロの力で逃げればいいや〜へへへ〜」という余裕があるため、そこで物語の勢いを出し切れなかったのが残念である。

まー。。。
ホロとの仲に関しては1〜3巻で一気にテンション高く描いているので、ここいらでまったりとした小休止の物語が入るのも悪くはないかな。

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ガリレオ再び「予知夢/東野圭吾」

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予知夢 (文春文庫)
[評価:★★★☆☆]

テレビドラマ・ガリレオの原作の第二弾。ドラマはこの巻と前巻の「探偵ガリレオ」をタネにしている。

前の巻と変わりがないね。ガリレオが科学の知識を活用して、殺人事件+不思議現象を解き明かすというスタイルはそのまま。

ドラマとは違って柴崎コウ演じる感情的な刑事がいないため口喧嘩シーンがない。淡々とトリックの解明をしているような印象で盛り上がりが弱い。それも相変わらず。

ミステリ色が強いのはいいが作品としては地味。
ドラマを見ているならドラマだけでよいかと。

●夢想る
「17年前から結ばれる運命だった少女」の屋敷に忍び込もうとした男。彼は17年前、その家と接点がなかったはず。なぜ彼はその少女を知っているのか。

●霊視る
ある女性が職場で扼殺された。家で留守番していた彼氏は窓の外にいる「被害者」を見た。彼は婚約者の亡霊を見たのか。

●騒霊ぐ
ある男が行方不明になった。妻は夫の足取りを追って一軒の家にたどり着く。うさんくさい住人。彼らは決まった時間に家を開けていた。その時間に彼女が家に忍び込む。すると、部屋が大きく揺れ始めたのだった。。。

●絞殺る
ホテルの一室で男の絞殺死体が見つかった。なぜか部屋のカーペットには焦げ跡が。それに絞殺の痕跡にしては傷跡が微妙に違う。男の娘はその前日に「火の玉を見た」と。。。ガリレオが導き出した答えは。

●予知る
不倫をしていた男。彼のマンションの目の前に越してきた愛人は「首を吊ってやる」と彼を脅迫し、実際に首を吊って死んだ。単なる自殺のはずだった。「二日前に女性が首を吊るのを見た」という証言がなければ。彼女は予知ができるのか。

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下書き小説「らき☆すた殺人事件/竹井10日」

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らき☆すた―らき☆すた殺人事件 (角川スニーカー文庫 183-3)
[評価:★★☆☆☆]

アニメ化で一世を風靡した人気マンガ「らき☆すた」の小説版である。
アニメブームにのっかれ的なニオイをむんむんと感じさせるデキ。

つまり、あまり面白くない。
とにかくはやく出版しろ的に、筆の速いライターに書かせた感じ?

書いている本人は面白いと思っているらしい独りよがりなギャグ。
粗い文章に粗い文体。推敲なし。下書き同然で一発完成!
締切必達! 速いが一番!

ミステリとしての体裁をもつシナリオも特筆するほどの完成度はない。
たぶん人が死んで推理するという形式なら深く考えずに書けるから、という程度の理由だろうな。

原作の「らき☆すた」は未読である。原作が面白いか面白くないかは知らないが、この小説が微妙なのと原作は関係ないだろうなー。

こなた、かがみ、つかさの三人娘のからみはそれなりに面白いからね。
文体・シナリオ・ギャグ。原作と関係ない部分が微妙。微妙すぎる。
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ひたすらバトル「XXゼロ呪催眠カーズ/上甲宣之」

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XXゼロ 呪催眠カーズ (宝島社文庫 598)
[評価:★★★☆☆]

そのケータイはXXで。
地獄のババぬき。

愛子としよりの冒険談シリーズ。その外伝である。
切れ味鋭いハサミを振り回し、圧倒的な力で愛子たちを苦しめる最強のライバル・狂人レイカの誕生秘話。時間的にはXXの直前の話となっている。

レイカの敵は「見つめただけで相手を催眠状態にできる」呪催眠の使い手。
この世に失望した彼女はレイカたちを巻き添えに自殺しようとする。

とにかく徹頭徹尾バトル。最初から最後まで、途中の小さなインターバルを除けば延々と戦い続けている。

・密室空間から出ると息ができなくなる呪い
・一定スピード以下に減速すると苦しむ呪い
・特定条件で自殺を仕向ける呪い

などなど。さらには毒虫や警察の包囲網にまで狙われる。
車の中。神社での大立ち回り。音の響く洋館。遊園地。ありとあらゆる場所でノン・ストップでバトりまくる。よくもまー、ここまでアイディアが続くものだな。

とはいえねー。★3かな。
バトルばっかりではちょっと単調なのだよね。
それで最後まで読ませる技術はすごいとは思うんだが。

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アル中がなー「ドラゴンキラーいっぱいあります/海原育人」

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ドラゴンキラーいっぱいあります (C・NovelsFantasia う 2-2)
[評価:★★★☆☆]

うーむ。衝撃を与えてくれた★5の前作より劣るな。
今回のお話は、主人公のココの昔の上官である男が「痛龍」のドラゴンキラーを手に入れ、その力で街を征服しようとする話である。

でまー、このココの上官「中尉」がウザすぎるんだな。
アル中でどうしようもなく自堕落で身勝手。

小悪党のココならあっさりとこの役立たずを撃ち殺すのだろうが、軍隊時代の性癖が出て、この穀潰しを面倒みちゃうんだよね。すごくココらしくない。

このおっさんとのカラミがほとんどの前半は微妙を通り過ぎて苦痛だった。
ココは別人のような感じで、おっさんはキモすぎる。

このどーしよーもないおっさんはココの口利きで売春宿に仕事を見つける。
そこでバイナラするつもりが、なぜか「痛龍」のドラゴンキラーに見初められ、その力をもって暴走をはじめる。

で、ここでもすごく違和感があるのよね。
龍すら屠る最強の生物ドラゴンキラーが、こんな薄汚いおっさんと手を組むのがどうにも理解できない、というかやめて欲しいわけ。

このドラゴンキラー・アイロンの立ち位置も微妙なのだね。
最期におっさんが死ぬと、あっさりとココたちに鞍替えするわけ。

本人的には「寂しかったから」みたいな感じなので、おっさんでも誰でも隣に誰かいればいいみたいなんだが、それはそれで無節操だよなー。

どうも登場人物が好きになれないのよな。
後半の勢いはそれなりにあるので、読んでいて面白くないわけではないが、前巻の衝撃を期待するとなんだかなーとがっかりする。
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最悪の主人公「果てしなき渇き/深町秋生」

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果てしなき渇き
[評価:★★☆☆☆]

なかなか最悪な感じの小説である。
覚せい剤を残して消息を絶った娘の消息を調べる元刑事を描いた話で、調査を進めると過激なチーマーや暴力団とのつながりがでてくる。

なにが最悪か。
登場人物が嫌な感じ。展開が嫌な感じ。
そして、何よりも嫌なのは主人公である。

酔った勢いで娘をレイプ。離婚した奥さんをレイプ。
追い掛けている男の奥さんをレイプ。奥さんの愛人をリンチ。
疲れたら押収した覚せい剤を吸う。

落 ち 着 け 、 お 前。
これで前職が警官という設定が嫌悪感を煽りまくってくれる。

本人は「家族の絆を復活させるんだーうおー!」といっているが、それって勝手な思い込みで妻も娘も誰も求めちゃいない。そりゃ、嫌だろ、こんな親父。

レイプ、リンチは当たり前、男が男を強姦までする。
ダークな世界、ノワールものとしては闇の世界を描いた感じではある。
そういったドロドロした話が好きならオススメだが普通はすすめない。

悪役ものがダメとはいわない。
カタルシスがないんだよな。スカッとした何かが。

ダークな気分で始まった物語はダークに終わる。
うーむ。こいつはヘヴィな小説だった。

これが「このミス大賞」か。。。
まー、筆力は認めるがね。何か違うと思わないでもない。

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