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美しきミステリ「46番目の密室/有栖川有栖」

関連するタグ: 46番目の密室  有栖川有栖  ミステリ  火村  小説 
46番目の密室 (講談社文庫)
[評価:★★★★☆]

有栖川有栖というと綾辻行人と双璧される新本格の作家である。実はミステリ好きというわりに有栖川有栖はこれが初だったりする。

いやはや。実に「美しい」。作者の新本格への深い愛情を感じる、完膚無きまでに徹頭徹尾な新本格小説である。

場所は45の密室トリックを発表した著名ミステリ作家の家。時はそこでおこなわれるクリスマス・パーティー。「次の作品で密室ものは終わりにする」。

そういった小説家はその晩「暖炉に上半身を突っ込んだ」死体となって発見される。その書庫は「密室」だった。さらに、身元不明の男の死体が、まったく同じ状態で地下の部屋から見つかる。。。

さらに奇妙なことが。主人公の部屋はトイレットペーパーが散乱し、宿泊客の靴には白ワインが注がれ、部屋の前に石灰石がぶちまけられる。いったい、誰がそんなことを?

あーもう! 何という甘美なシチュエーション! これぞ新本格。これぞミステリ。といわんばかりにパーフェクト。犯罪学者・火村助教授が次々に積もり積もった謎を解体していくシーンはすーっと気持ちが軽くなっていく。

登場人物たちの会話も軽妙。ひねりも絶妙。トリックだけではなく、読み物としてもなかなか面白い。実にオススメな作品。
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46番目の密室  有栖川有栖  ミステリ  火村  小説 

やっと始まり「機動戦士ガンダムUC3/福井晴敏」

関連するタグ: 機動戦士ガンダムUC    福井晴敏  ラノベ  ライトノベル  小説  SF  ロボット 
機動戦士ガンダムUC 3 (3) (角川コミックス・エース 189-3)
[評価:★★★★☆]

小説2冊分も序章を見させられた感じのガンダムUC。ようやく物語がはじまる。いやー。今回は熱いね。熱い。

赤い彗星の再来フル・フロンタルがようやく物語の表舞台に姿を見せ、バナージの駆るガンダムUCと激突する。その後半シーンが非常に熱い。

>見せてもらおうか。新しい「ガンダム」の性能とやらを

>当たらなければ、どうということはない!

このセリフ!!! 福井晴敏ガンダム大好きだねーw

さらにフル・フロンタルは「宇宙にただようデブリを蹴っ飛ばした反動で三倍速で動く」とある。ルウム戦役が戦艦を使ってシャアがしたやつだ。

さらに福井晴敏はイタズラを仕込む。フル・フロンタルの攻撃でネェル・アーガマが被弾、外れたミサイルが外れて、キクマサという科員が押しつぶされるのだが。。。

これ「亡国のイージス」のパロディじゃないですかwww

この福井晴敏、もうノリノリである。

対面にこだわって身動きできないおとなにキレて、子供のバナージが何とかするシーンとかも、実にガンダム。まさにガンダムへのオマージュ全開。

一番ガンダムらしいなーと感心したのは、フル・フロンタル親衛隊の隊長アンジェロのセリフがいい。

彼は、フル・フロンタルと出撃しても「戦わない」ことに美学を感じていた。フル・フロンタルが圧倒的に強いため、親衛隊は戦う必要がないらしい。なのに、ガンダムUCの規格外の性能に危機を感じて、彼は思わず引き金を引いてしまう。

そのあとのセリフが。。。

>「わたしに……わたしに、撃たせたなあっ!?」

この身勝手さ! 勝手に美学を持ち、それが勝手に壊れて、逆ギレする! まさに富野節ではないですか、これ!

完膚無きまでにガンダム・テイストを再現する福井晴敏に、ガンダムへのLOVEを感じる。願わくば、このテンションで続けてもらいたいものだ。

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機動戦士ガンダムUC 福井晴敏 ラノベ ライトノベル 小説 SF ロボット
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ハートフル「ホームレス中学生/田村裕」

関連するタグ: ホームレス中学生  田村裕  小説 
ホームレス中学生
[評価:★★★☆☆]

何でも200万部売れたというベストセラーである。漫才師・麒麟のツッコミ田村裕が中学生時代に「ホームレスになった」という実話である。

読んだ感想としては。。。ホームレスの期間はわりと短く、三分の一くらいで友人の家にご厄介になる。そこからは「人々の優しさに支えられた」ハートフルな物語がはじまる。

小公女セーラばりの苦労話が展開することもなく、ホームレス時代をくぐり抜けてからは、わりと幸せだったりする。

いい話はいい話なのだが、ひねりが特にないので「普通」かな。
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ホームレス中学生  田村裕  小説 

キュートで颯爽とした少女の話「夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦」

関連するタグ: 森見登美彦  夜は短し歩けよ乙女  小説  コメディ 
夜は短し歩けよ乙女
[評価:★★★☆☆]

ちょっと奥手な京都の大学四年生の主人公。大学一年生の後輩に惚れてしまった彼が、何とか彼女の気を引こうと奮闘する物語。主人公の男の視点と、彼女の視点が交互に切り替わって描かれている。

ちょっと奥手なところが、モリミーワールドである。ストレートに想いを伝えられないがゆえに、遠回しな策略に走るヘンテコな主人公は健在である。

ただ、どっちかというと、今回は男のほうはどうでもよく、女のほうが主役である。冒頭の『これは私のお話ではなく、彼女のお話である。』という一文は伊達ではない。

何というか、この女の子がすごく堂々としているんだね。揺らぎがないというか。かといって、別に偉そうなわけではなく、清楚で礼儀正しく、ウブでニブいところがある。そのバランスというか配合が絶妙である。

本上まなみの推薦文『なんてチャーミングな女の子だと』という一文が適切。それらを表現するならチャーミング。そんなステキな少女の話。

とはいえ。。。なんかパンチが弱いんだよねー。少女は「かわゆい」のだけど、それだけじゃー、話を推し進めるのが弱い。同じ日常系を扱ったデビュー作『太陽の塔』はコメディ色の強さでそれを補ったが、今回は少女が主役であるため、その押しが弱く感じた。

ストーリー的な勢いに欠けるので、そこを評価するわたしには★3かな。ただ全体を貫く「あたたかくてかわいくて、ちょっと変」な雰囲気は実に独特で味わい深い。そういう雰囲気を楽しめるなら悪くない作品だろう。
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森見登美彦  夜は短し歩けよ乙女  小説  コメディ 

もうプロローグはいい「機動戦士ガンダムUC2/福井晴敏」

関連するタグ: 機動戦士ガンダムUC    福井晴敏  ラノベ  ライトノベル  小説  SF  ロボット 
機動戦士ガンダムUC 2 ユニコーンの日(下) (角川コミックス・エース 189-2)
[評価:★☆☆☆☆]

逆襲のシャア以降を取り扱ったガンダム・シリーズの小説第2巻。作者は亡国のイージスの福井晴敏。

小説1冊分を費やして、まったく話が進んでいなかった1巻。これプロローグみたいなものだよねーと思いつつ次に期待したわけだが、なんと2巻もプロローグだった! という衝撃のオチが。

今回はコロニー内で、ロンドベルのMS部隊とネオ・ジオンの強化人間が操るMS1機の戦いが勃発。そのしっちゃかめっちゃかになった状態で、謎の少女オードリーを探すバーナージがたどりついた場所。そこにはガンダム・ユニコーンの姿があった。

という展開。今回の巻の終わりごろでようやくバーナージはガンダムに乗るわけ。小説2冊でようやく。。。! なんという遅さだ。

初代ガンダムに例えると、アムロがガンダムに乗る>ガンダムがザクを蹴散らす>シャアが出てきて「見せてもらおうか連邦のMSの実力とやらを!」という。まで進んだ。

ぜんぜん序盤じゃないのさ! いったいいつになったら本編が始まるのか。率直にいって読んでいて苦痛である。

なにがダメなんだろう。
今回は戦闘シーンが無駄に長いことである。福井晴敏こん身の戦闘描写は60ページ以上にも及ぶ。

ただ、この戦闘、単なるケンカみたいなものなので、戦うことに意義がないのよね。なので単に戦っているだけなので、勝ち負けや展開にハラハラすることがない。そこが致命的である。

アニメなら迫力の戦闘シーンを絵で見えれば、それなりに視聴者を楽しめさせられるだろう。だが、文字だけの小説で、意味のない戦闘を読むのは正直つらい。

そして、主人公バーナージとオードリーの影が薄い薄い。今回は最終盤まで空気である。現状、彼らは無力な人物にすぎない。そして明確な目的もない。単に巻き込まれるのみである。彼らが物語を動かせない以上、どうにも読んでいてパンチが足りない。

前回よりもヒドイと感じたので今回は★1。福井さん。そろそろ本気を出してくれませんかね? なんだか読むのがツラいです。。。
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機動戦士ガンダムUC    福井晴敏  ラノベ  ライトノベル  小説  SF  ロボット 

福井節健在「機動戦士ガンダムUC1/福井晴敏」

関連するタグ: 機動戦士ガンダムUC  福井晴敏  ラノベ  ライトノベル  小説  SF  ロボット 
機動戦士ガンダムUC 1 ユニコーンの日(上) (角川コミックス・エース 189-1)
[評価:★★☆☆☆]

機動戦士ガンダムの世界を舞台とした小説である。原案に富野由悠季のクレジットが示すとおり、正式なサイド・ストーリーのひとつ。いわゆる「逆襲のシャア」以降に位置する物語である。

作者は「亡国のイージス」の福井晴敏。ターンAに続きというやつで、ここまで名の売れた作家がガンダムのノベルを引き受けるのは珍しい。たぶんガンダムがよっぽど好きなんだろうね。

宇宙世紀1年に起こった空前絶後の大テロリズム。各国首脳の容赦ない爆殺。その実行犯であるサイアムは、億分の一の偶然で「ラプラスの箱」というものを発見する。

その箱のなかには連邦政府が瓦解するほどの秘密が封じ込められている。サイアムはその箱を使って、強大なビスト財閥を一代で作り上げる。

物語は宇宙世紀96年からはじまる。そのビスト財閥の現当主が『袖付き』と呼ばれるMSを率いる謎の組織に「ラプラスの箱」を譲渡しようとする。

袖付き。袖付きの動きを警戒する遊撃部隊ロンド・ベル、その取引を食い止めようとする謎の少女、少女を助けたために巻き込まれた少年バナージ・リンクス。物語は徐々に動き始める。

本当に徐々に動いているよなーといった感じ。宇宙世紀元年のプロローグが三分の一を締めているからね。プロローグが50ページって。

本編もものすごく展開が遅い。ガンダムを知らない人が読んでも大丈夫なようにやたらと説明が細かい。でもガンダムを知らない人はこの小説をよまんような気がするが。。。知っている人はにやりくすりが出来るような書き方だけどね。

冒頭のカラー口絵にシャアっぽい仮面の人がいるんだが、その人は登場すらすることなく終わってしまった。

一応★2をつけてはみたものの、まだまだ評価できる段階ではない。料理でいうとやっと食材を切って下準備ができた段階。盛り上がるかどうかは今後次第である。借り物の本なので、今後に期待しつつ読んでいこう。

ちなみに、福井晴敏は文体に癖のある作家だと思う。独特の福井節というか。〜ならば〜だろう。不実がどうたらこうたらとか。そういった濃厚な福井文体は健在である。それが爆発すれば化けるかもね。
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すべての子供だった人へ「星の王子さま/サン=デグジュペリ」

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星の王子さま―オリジナル版
[評価:★★★☆☆]

あの有名な「星の王子さま」である。実は初読。どんな本なんだろうね。

こういう本である。
主人公の乗る飛行機が砂漠に墜落。その故障を直していると、不思議な少年と出会う。彼は、自分と大きさの変わらない、小さな惑星の王子さまで、宇宙を旅している。

王子さまは自分が旅した惑星と、その住民の話をはじめる。
・たったひとりで惑星に住む王さま
・称賛を求めるおじさん
・酒浸りのおじさん
・優秀だと言い張る実業家

など。

純粋な心を持つ王子さまは彼らの行動に疑問をかんじ、いろいろと言い返す。その王子さまのまっすぐさがね。これらは現代を生きる人たちの風刺。それに対してきちっと自分の意見を通し、美しい生き方を曲げない王子さまはカッコいい。

そして地球を訪れる。
その広大な惑星で、王子さまはキツネと出会う。
キツネとのやりとりは白眉だねー。この物語の。

「でも、もしきみがぼくをなつかせてくれたら、ぼくの暮らしは急に陽が差したようになる。ぼくは、ほかの誰ともちがう君の足音が、わかるようになる。ほかの足音なら、ぼくは地面にもぐってかくれる。でもきみの足音は、音楽みたいに、ぼくを巣の外へいざなうんだ。それに、ほら! むこうに麦畑が見えるだろう? ほくはパンを食べない。だから小麦にはなんの用もない。麦畑を見ても、心に浮かぶものもない。それはさびしいことだ! でもきみは、金色の髪をしている。そのきみがぼくをなつかせてくれたら、すてきだろうなあ! 金色に輝く小麦を見ただけで、ぼくはきみを思い出すようになる。麦畑をわたっていく風の音まで、好きになる……」


それに、こうもいう。

たとえば、きみが夕方の四時に来るなら、ぼくは三時からうれしくなってくる。そこから時間が進めば進むほど、どんどんうれしくなってくる。そうしてとうとう四時になると、もう、そわそわしたり、どきどきしたり。こうして、幸福の味を知るんだよ!


そして、こういう。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
「きみのバラをかけがえのないものしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。きみはなつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある……」


キツネが語る人と人とのつながり。
当たり前のことを、心で感じることを、キツネは言葉にして紡ぐ。

そうして、主人公との会話を終えた星の王子さまは、自分が残していったバラのため(バラは恋人のメタファーだろう)、再び宇宙へと帰っていく。

王子さま登場人物のセリフは現実の世界の風刺や警句に満ちている。子供が読めば人生の教養書として、大人が読めば反省する部分を感じつつ読めるだろう。子供よりも大人が読むべき本かな。

なるほど、読み継がれるだけのことはある。

ただまー、極端な感動や極端な面白さがあるわけでもないので、ふーんとは思うだけで格別に面白いわけでもない。

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星の王子さま  サン=デグジュペリ  小説  童話 

涼宮ハルヒの日常「涼宮ハルヒの退屈(ハルヒ3)/谷口流」

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涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)
[評価:★★★★★]

ハルヒ・シリーズの第三巻である。
今回は短編集。実に。実に面白い。

ハルヒの暴走する日常を描く形式の本作は、短いタイミングで一発ネタのように打ち上げる短編のほうが似合うのかもしれない。

起伏が短いのがイイネ。

トラブルメイカーのハルヒが落ち込むと低調になりやすい物語なのに、物語の形式上、どうしてもハルヒを落ち込ませる必要があるのが本作の弱点。短編なら落ち込み時間自体が短いので、それほど気にならないんだな。

今回、というかか、いつものことだが宇宙人・長門ユキが大活躍である。
草野球大会に出場し、強豪を相手に押されまくるSOS団。鬱憤のたまるハルヒを抑えるため、長門のとった行動は?

 やがてベンチまで歩いてきた長門は、俺にバットを手渡して、
「それ」
 使い古しのバットを指さし、
「属性情報をブースト変更」と言った。
「なにそれ?」と俺。長門はしばらくじっと俺を見つめてから、
「ホーミングモード」


要約すると。。。
バットを誰が打ってもホームランになるように改造した。ホーミングもするので、バットがボールに勝手に当たる。

要約っていうか、文字数増えてるってのはツッコんじゃダメ。絶対!

作者も長門が「何とかしすぎ」なのは気づいたようで、
あとがきで「シリーズタイトルそのものを『がんばれ長門さん』にしようかと思い始めた」などと書いている。

まー、それくらい長門が活躍している。
「長門は俺の嫁」という発言をネットでたまにみるが、なるほど、この冷静な仕事人タイプのカッコよさは惚れる人も多いだろうな。

各話のあらすじはこんな感じ。

・涼宮ハルヒの退屈
 SOS団率いるハルヒが草野球大会に出場する

・笹の葉ラプソディ
 七夕の日。みくるに呼び出されたキョンは過去に戻り、中学生のハルヒと出会う。

・ミステリックサイン
 消えた電脳部の部長とハルヒが作ったサイトのバナーの因果関係とは?

・孤島症候群
 古泉の紹介で訪れた孤島の別荘。そこで殺人事件が起こる。。。

あ。ちなみに。
1、2で書いたとおり、ハルヒたちの個性ではなく、キョンのツッコミをメインに読んだほうが面白いと思うので、そこは注意してね。約束だよ!
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防犯探偵あらわる「硝子のハンマー/貴志祐介」

関連するタグ: 硝子のハンマー  貴志祐介  小説  ミステリ 
硝子のハンマー (角川文庫 き 28-2)
[評価:★★★☆☆]

黒い家など、ホラーというかサスペンス的な小説で有名な貴志祐介の書いた本格推理小説。

元泥棒くさい、うさんくささ爆発の防犯探偵(豊富な防犯知識を駆使する探偵)とミステリ好きの弁護士が、高層ビルで起きた密室殺人事件の真相に挑む。

「今、他の人間に犯行が可能でなかったか、専門家を雇って調べています」
「専門家というと、何の?」
「一応、防犯コンサルタントという肩書きがあるんですが、侵入に関するプロです」
「侵入のプロ?」
「まあ、ほとんど、泥棒のようなものと思っていただければ」


防弾ガラス、監視カメラ、暗証番号式のエレベーター。
何者も寄せ付けない鉄壁のセキュリティのなか、介護サービス会社の社長が何者かによって撲殺された。その謎を解き明かす。

小説は前編が推理パート、後編が犯人主観の物語となっている。
抜け目なく、多少のイリーガルなら突破してしまう防犯探偵の性格が実にいい味を出している。マジメな弁護士とのやりとりも面白い。

それに対して、後編の犯人生い立ち編は、まー、普通かな。犯人がなぜ犯行に走ったかを描くのは、青の炎を描いた貴志祐介らしいといえば貴志祐介らしい。

でも、彼にもツラい過去があってね。だから犯罪に手を染めたのよね。
という話なんだけど、類型的であまり胸を打たないな。あっそ、みたいな。

ミステリ小説ってトリック暴露の瞬間に、どれだけ痺れられるかがポイント。
この作品、その痺れが切れ味鋭くないのよね。

それは犯人パートで犯人が犯行を犯す準備から実行までを描いたためで、探偵が口で説明したわけではないから、かな。こうきて、こうして、ああやって、みたいな謎を解きほぐす感覚がなかったのが残念。

まー。。。トリック自体もそこまですごいものでもないんだが。。。
ふーんといったかんじ。

ミステリとしてはあれだけど、防犯探偵のキャラがいい。

謎を解いた防犯探偵は、犯人を呼び出す。
てっきり「事件のことを黙っていて欲しければ金を出せ」と取引を要求されている。そう思った犯人は。。。

「半分で、どうですか?」
 それから、純子に目をやった。
「いや、三分の一ずつ。一人頭、二億円以上になるはずです」
 男は、無表情に首を振った。
「じゃあ、いくらなら……?」
 絶望に打ちひしがれそうになりながら、一縷の望みを込めて訊ねる。
「私は、そこまで強欲じゃない。本来なら、文句なく、折半で手を打ってた。そこにいる、青砥先生には報告しないでね。お望みなら、ダイヤをさばくルートくらいは、紹介できただろう」
 男は嘆息するようにいう。
「だが、君は、最悪の選択……殺人に手を染めた」


いいね。このセリフにこそ防犯探偵のキャラが生きている。
泥棒としての矜持。物は盗んでも命までは奪わない。
それが防犯探偵のボーダーライン。

キャラがおいしいので防犯探偵の活躍をまた見てみたい。
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ドラマと現実がクロス「学園カゲキ!2/山下進」

関連するタグ: 学園カゲキ!  山下進  ラノベ  ライトノベル  コメディ  学園 
学園カゲキ! 2 (ガガガ文庫 や 1-2)
[評価:★★★☆☆]

役者を目指す学生たちが集う学園カゲキ。学園では有望な生徒たちを主人公にしてドラマを作成し、BSチャンネルで放送している。

今回のドラマは「怪獣ラブコメ・きぐるみん」。
日常生活できぐるみを着た少女と、彼女が好きな男の子と、きぐるみ少女の親友の女の子。三人の三角関係を描いた物語である。

今回の話のキモ。それはWの三角関係である。
ドラマでも三角関係なら、出演者たちも三角関係。

ただし、横恋慕の女の子が現実とドラマで逆転していて、そのそのあべこべの設定がお話のコクとなっている。

現実で二人は仲違いしてしまうわけだが、ドラマの役を通じて互いの心境を理解し、許し合うという展開になっている。そこは演劇ドラマらしいよね。

まー、そこそこは楽しめるんだが。。。
ただ、コメディ作品として突き抜けたものがないのだよな。クスッとたまには笑えるのだが、それくらい。もうちょい、なにかがあるといいんだけど。
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46EN

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